こんにちは。メダカの奥深い世界へようこそ。
今回は、独特の神秘的な美しさを持つ「アルビノメダカ」の遺伝について、専門的な視点から少し踏み込んで解説していこうと思います。
「親がアルビノなのに、子供は普通の色だった…」
「アルビノ同士を掛けるとどうなるの?」
そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。実はアルビノの遺伝には、生物学的な明確なルールが存在します。この仕組みを理解すると、狙った通りの個体を作出する「ブリーディング」がもっと面白くなりますよ。僕と一緒にその秘密を紐解いていきましょう。
遺伝の話に入る前に、まず「なぜアルビノになるのか」という生理学的な仕組みを理解しておく必要があります。

通常、メダカの体色は以下の4つの色素胞(しきそほう)の組み合わせで決まります。
アルビノメダカの最大の特徴は、「黒色素胞(メラニン)」が作られない、または極端に少ないという点です。さらに、メダカのアルビノ遺伝子(i, i2, i3など)は黒色素胞だけでなく、黄色素胞の色調も淡くする性質があり、白色素胞の発達を良くする。そのため、アルビノメダカは白っぽく見えることが多いです。

これは、メラニンを生成するために必要な酵素「チロシナーゼ」の遺伝子が変異し、機能しなくなっているためです。
皮膚の黒色が抜けるだけでなく、網膜のメラニン色素も欠乏するため、血液の色が透けて目が赤く見える(レッドアイ)のがアルビノの本来の定義です。
ポイント:アルビノの定義
メラニン色素の生合成に関わる遺伝子の変異により、先天的にメラニンが欠乏または大幅に減少した遺伝形質。完全型アルビノでは黒色素胞内のメラニンが完全に欠如し、目は血管が透けて赤く見える。部分型アルビノ(弱アルビノ型)では微量のメラニン生成能力が残存し、チェンジカラーアイやルビーアイと呼ばれる中間的な眼色を示します。

識別方法
体が白くても目が黒ければアルビノではない(白メダカなど別形質)。ただし、部分型アルビノには微量のメラニンによる目色の変化型(赤~赤黒~黒の範囲)があり、目視だけでは判別が困難な場合があります。遺伝子型と表現型を正確に同定するには、DNA配列解析による遺伝子検査が最も確実になってきます。
ここからは少し専門的な遺伝学の話になります。
アルビノの遺伝は、メンデルの法則における「常染色体・潜性遺伝(じょうせんしょくたい・せんせいいでん)」という形式をとります。
かつては「優性・劣性」と呼ばれていましたが、日本遺伝学会により2017年から「顕性(けんせい)・潜性(せんせい)」へ用語が改められました。これは「劣性=劣っている」という誤解を避けるためです。
本記事では親しみやすさを考慮し、従来の「優性・劣性」という言葉も補足的に用いますが、現代の遺伝学では「現れやすい=顕性」「隠れやすい=潜性」と定義されていることを覚えておいてください。
ここでは仕組みを分かりやすくするため、以下の記号を使います。
メダカは父親と母親から1つずつ遺伝子をもらい、ペア(対)で持っています。組み合わせは以下の3パターンしかありません。
| 遺伝子型 | 表現型(見た目) | 解説 |
|---|---|---|
| AA | 普通のメダカ | メラニンを作れる |
| Aa | 普通のメダカ(ヘテロ) | 遺伝子は持っているが見た目は普通(ヘテロ接合体) |
| aa | アルビノメダカ | 潜性遺伝子が表に現れアルビノになります |
ブリーディングの現場でよくあるパターンを、この遺伝子型を使ってシミュレーションしてみましょう。これで次世代にどんなメダカが生まれるか予測できます。
これが一番勘違いしやすいパターンです。
「片親がアルビノだから、子供もアルビノになるだろう」と思いきや…。
結果:生まれてくる子供は、見た目は全て「普通のメダカ」になります。
しかし、この子たちは全員、隠れアルビノ遺伝子(a)を持つ「ヘテロ」です。
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ケース①で生まれた「見た目は普通だけどアルビノ遺伝子を持つ子たち」を親にして掛け合わせると、孫世代(F2)でドラマが起きます。
組み合わせの確率は以下の通りです。
結果:確率的には「3:1」の割合で、普通のメダカの中にポツリとアルビノが出現します。
メンデルの法則の美しい実例ですね。
キャリア個体とヘテロ個体の違い(ほぼ同じ意味)
・ヘテロ個体(ヘテロ接合体)
遺伝子のペアが異なる場合を指します。例えば、黒い色の遺伝子(A)と茶色い色の遺伝子(a)を持つ個体は「Aa型」でヘテロ個体です。見た目は黒く見える(黒が優性)かもしれませんが、遺伝子としては2つの異なる情報を持っています。
・キャリア個体
「保因者」とも言い、目に見えない劣性の遺伝子を隠れ持つ個体を指すことが多いです。同じ「Aa型」の黒いメダカでも、「キャリア」と呼ぶときは、「見た目は黒だけど、実は茶色の遺伝子を持っている」という意味合いで使われます。
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最も確実なパターンです。
結果:生まれてくる子供は100%アルビノになります。
アルビノを固定化したい場合は、この交配を続けるのが基本です。
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たとえば、ある品種をアルビノ化したい場合、最短ではF2(孫世代)でアルビノ個体を得ることが可能です。
ただし、ここに別の特徴・・・たとえば「松井ヒレ長」のような異なる遺伝子が関係すると、遺伝の組み合わせが一気に複雑になります。
アルビノと普通体色の松井ヒレ長を組み合わせて、「アルビノでヒレ長のメダカ」を作りたい場合を考えてみます。
ここでは、
とします。
まず最初に、
をペアにして産卵させます。
この交配で生まれる F1(子世代) は、すべて遺伝子型が AaMm(ダブルヘテロ) になります。
見た目は「普通体色・普通ヒレ」で、アルビノもヒレ長も隠れた形で持っている状態です。
次に、このF1同士(AaMm × AaMm)を兄妹掛けしてF2(孫世代)をとります。
このとき、それぞれの遺伝子について
となるので、両方を同時に満たす
が生まれる確率は
となります。

つまり、アルビノ(aaMM) × 普通体色の松井ヒレ長(AAmm) でF1を作り、
そのF1同士(AaMm × AaMm)からF2をとると、
F2の中から 16匹に1匹くらいの確率で「アルビノで松井ヒレ長」の個体が現れてきます。
では、下記の写真の竜の瞳を出目にしたアルビノ出目松井ヒレ長幹之を作ろうとすると・・・。アルビノ、松井ヒレ長、出目.jpg)
出目は、骨格の変異が関わる形質とも言われており、アルビノのように「単純な潜性遺伝」として整理できるタイプとは少し性格が異なります。
「骨格形態の遺伝+奇形傾向」という複雑な要素を含んだ形質と考えると、より複雑になります。
アルビノの飼育において最も重要なのが、「視力が弱い」という事実への配慮です。

このため、アルビノ個体は餌を見つけるのが苦手だったり、直射日光を嫌がったりします。
こういった「生体の仕組み」に基づいたケアができるかどうかが、ブリーダーとしての腕の見せ所だと僕は思います。
アルビノの遺伝は「潜性遺伝(劣性遺伝)」。
このルールさえ覚えておけば、「なぜこのペアからアルビノが出なかったのか」「次はどう掛ければいいのか」が手に取るように分かります。
遺伝の仕組みは数学的で少し冷たく感じるかもしれませんが、その計算の果てに生まれてくるルビー色の瞳を持つメダカは、本当に神秘的で温かみのある美しさを持っています。
ぜひ、この知識を活用して、あなただけの理想のアルビノメダカを作出してみてくださいね。
⚠️ 重要な前提条件
以下の計算式および遺伝分離比は、アルビノ遺伝子とヒレ長遺伝子が独立している場合の理論値です。
アルビノ(aa)出現率 × ヒレ長(mm)出現率 = アルビノかつヒレ長出現率
1/4 × 1/4 = 1/16(約6.25%)
2つの遺伝子が独立している場合とは:
このような場合、メンデルの独立の法則に従い、両形質の分離は互いに影響を与えません。
もし研究が進んで、これら2つの遺伝子が同じ染色体上の近い位置にあることが判明した場合:
現在の研究状況
メダカのアルビノ遺伝子(tyrosinase遺伝子など)とヒレ長遺伝子について:
確認されている事実
松井ヒレ長は2012年に熊本県玉名郡長洲町の松井養魚場で発見された形質です
3つの不確定要素
遺伝子の特定ができていない
優性・劣性の関係が遺伝子レベルで確認されていない(経験則での潜性遺伝)
他の形質との遺伝的相互作用が未確認