この記事では、メダカが秋から徐々に越冬態勢に入り、冬眠へと向かう生理的変化や行動のタイミングを、水温を基準にわかりやすく解説しています。さらに、餌を食べなくても糞をする不思議な現象や、冬眠前後の適切な飼育法についても、初心者から経験者まで参考になる内容で伝えています。
11月も後半になると、人はもう冬の気配を感じますが、メダカにとってはまだ秋の終わりのような季節です。水温が15℃を切るまでは活発に動き、徐々に越冬態勢に入っていきます。
このズレはなぜ生じるのか。気温の数字だけで見ると、11月は「3月中旬から4月上旬」に相当し、12月上旬〜中旬は「3月上旬から中旬」に近い暖かさです。特に西日本など比較的温暖な地域では、この時期のメダカはまだ完全な越冬態勢には入っていないことが多く、本格的な「冬モード」に切り替わるのは、例年クリスマスを過ぎてからとなります。
いわゆるクリスマスショックの訪れです。

メダカは変温動物であり、その体温は環境水温がそのまま体温(水温≒体温)となります。このため、代謝速度は水温に直接依存し、酸素消費量および消化酵素活性は10~15℃付近で顕著に抑制されることが知られています。
具体的には、低水温下では消化酵素(特にアミラーゼやリパーゼ)の活性が顕著に低下し、この現象は「低温消化抑制反応」とされています。
日照時間が短くなり水温が低下していく秋季から初冬の段階でも、日中の水温が15℃前後であれば、メダカの代謝酵素は比較的活発に機能し、摂餌行動も継続します。つまり、気温の「数字」ではなく、実際の「水温」と「代謝酵素の活性」に加えて、秋の短日(光周期の短縮)もメダカの季節判断に大きく関与していると言えます。

メダカが実際に越冬に向けて準備を開始するのは、水温10~15℃を下回り始める段階です。この温度領域では、体内の各種代謝酵素活性が急速に低下し、同時に肝臓での脂肪貯蔵が活発化し始めます。
この過程は、冬期を生き抜くための生理的適応であり、秋口から11月を通じて進行する脂肪蓄積が、その後の越冬成功率に大きく影響します。
11月〜12月前半の水温は、晴れた日なら日中にしっかりと上がることが多く、メダカも自ら餌を探して泳ぎ回ります。この段階で最も重要なのは、体温と摂食行動の密接な関係です。
水温が低下するにつれ摂餌行動がなくなる過程は、単なる「活性の低下」ではなく、複雑な生理的な切り替わりが関係しています。
一方で、クリスマス前後から一気に寒さが増してくると、日中の水温がなかなか上がらず、次第に摂餌行動が減退していきます。
クリスマス前後の寒波到来!クリスマスショックの訪れです。
目安として、以下のポイントで判断してください:
これらが見られたら「越冬モードに入りつつあるサイン」と考えられます。それまでは、11月の時点では、メダカの動きと水温を見ながら、無理のない範囲で少量ずつ餌を与えても問題ありません。
冬越し準備での餌切り(餌止め)のタイミング
「最近ほとんど餌をあげてないのに、メダカが糞をしている……」という不思議な現象を経験したことはないでしょうか?
この現象は、メダカの生理学的な受動的ろ過摂食(passive filter feeding)機構によって説明できます。
メダカを含む多くの魚類には、鰓耙(さいは)と呼ばれる器官があります。これはエラの一部であり、口から吸い込んだ水が鰓を通過する際に、微細な有機物やプランクトンをろ過する構造を持っています。ただしメダカは鰓耙が少なめの魚のため、鰓耙による典型的なろ過摂食には依存していません。
冬前~初冬のメダカは、食物不足や代謝低下に伴い、呼吸のために口を開けて水を吸い込む際、水中のプランクトン(植物性プランクトン、バクテリア、有機デトリタスなど)が鰓耙に引っかかり、本人(本魚)の意識なしに体内へ取り込まれることがあります。
つまり、冬季のメダカが呼吸時に微量のプランクトン・バクテリアを取り込み、それが部分的に消化・吸収されることで、摂餌行動を示さなくとも、わずかながら糞が生成される可能性があります。
また冬期のメダカにおいて、代謝速度の大幅な低下に伴い、吸収可能な栄養量が極めて限定されます。この段階でも少量の糞が観察されるのは、ろ過メカニズムが受動的に機能しているためであり、同時に体内に蓄積された脂肪が緩徐に分解・利用されていることを示唆しています。


完全な越冬態勢に入った真冬のメダカは、意識的な摂餌行動をほとんど行いません。この段階で肝臓から筋肉への脂質移動が活発化し、越冬期間を通じて蓄積脂肪を徐々に消費することで、生命維持に必要な最小限のエネルギーを確保しています。
さらに、水温5℃以下の厳しい冬になると、水中の微小生物群集(ゾウリムシ、ミジンコなど)も、環境に応じて休眠状態に入り、自然環境でもほとんど姿を見かけなくなります。
室内で増やしたような生餌をそのまま寒い屋外容器に投入すると、メダカ以前に生餌自体が活性を失い、その死骸が水質悪化の直接的な原因となってしまいます。つまり、「生きている餌だから水を汚さない」という一般的な考えは、冬場には当てはまりません。

特に秋から冬への移行期には、1日の水温差が10℃以上に達する状況を避けることが極めて重要です。
メダカを含む変温動物が急激な水温変化にさらされると、体内のストレスホルモン(コルチゾール)の濃度が上昇し、血漿中の乳酸とアンモニア濃度が増加することで、生理的負担が生じます。このストレス状態では、免疫機能の低下に加えて、体水分の恒常性維持が困難になり、疾病感受性が著しく上昇します。
越冬中に無理に生餌を与える行為は、代謝酵素の不活性化と相まって、消化不良や水質汚濁を同時に招くため、避けるべき行為です。

冬の訪れは、人間の感覚よりも一歩遅れてやって来ます。メダカたちが完全に越冬態勢に入るまでは、日中の水温や動きを見ながら、無理のない範囲での給餌や水換えなど、穏やかなお世話を続けてあげてください。
越冬を経験させることは、単なる「寒冷期の生存」ではなく、翌春の繁殖率向上と良好な形態発達につながることが養殖学の知見から知られています。これは、低水温期を通じて魚体内の季節リズムが「リセット」され、春の日照時間と水温上昇に応答した積極的な摂食・生殖活動へとスムーズに切り替わるためです。
また、冬眠を経験したメダカは、そうでない個体に比べて寿命が延びる傾向が観察されており、これは低代謝期間の生理的休止状態が、細胞老化速度を緩和する効果によるものと考えられています。

雪が降り、水面が凍るような本格的な冬に入り、メダカが底でじっと動かなくなったら、そこから先は「静かに見守る時間」です。
容器を頻繁に動かしたり、網で追い回したりすると、越冬モードからの不要な覚醒が誘発され、エネルギー消費が増加するとともに、ストレスホルモンの上昇によって免疫機能がさらに低下します。
「そっとしておくこと」も大切なお世話のひとつであり、これは単なる「放置」ではなく、メダカの季節順応と生理的サイクルを尊重した、生き物の体や習性に合わせて、安全で健康に育てるための正しい飼育方法です。
今回の記事でお伝えした内容は、従来の観察的知見に加えて、以下の学術分野からの知見を統合したものです
季節ごとのメダカの変化を知ることは、「今この瞬間」の行動にもきちんと理由があることを理解することにつながります。
水温が下がるこれからの季節、メダカたちの生理的なタイミングを尊重したお世話を心がけ、冬を無事に乗り越えて、来春の繁殖シーズンへ向かわせてあげてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このような季節の変化と飼育のタイミングについて、今後も動画や記事でお届けしていきます。
YOUTUBEのチャンネルではよりかみ砕いて分かりやすくお伝えしています。
登録とグッドボタンで応援していただけると幸いです。