屋外でメダカを飼育していると、どうしても避けられないのが「雨」ですよね。
「雨水が入って容器からメダカが溢れないかな?」という心配はよくお聞きしますが、実は目に見えない「水質」の部分でも大きな変化が起きています。
「雨水は天然の水だから綺麗でしょ?」と思うかもしれませんが、メダカにとって本当にそうなのでしょうか?
今回は、僕が普段の飼育で意識している「雨と水質の関係」について、少しだけ深く掘り下げてお話ししようと思います。意外と見落としがちなポイントなので、ぜひ読んでみてくださいね。
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自然界における水の循環を想像してみてください。
山に降った雨は、地表を伝い、あるいは地中深くへと浸透しながら、土壌や岩石から多種多様なミネラルを溶かし込み、最終的に川を経て海へと流れ着きます。その後、太陽の熱で温められた海水が蒸発して水蒸気となり、再び雲を形成して雨を降らせる。地球規模でこの壮大なサイクルが繰り返されています。

ここで一つ、メダカの屋外飼育において盲点になりがちなテーマについてお話しします。それは「降り続く雨が綺麗すぎるんじゃないか問題」です。
雨は、海や地表の水が蒸発する際に不純物が取り除かれた、いわば「天然の蒸留水」です。降り始めの雨こそ大気中のチリや汚染物質を取り込んでいるものの、連日降り続くような雨は、降り始めの雨よりも不純物がかなり少なく、水道水や河川水と比べると「蒸留水に近い、とてもクリアな水」になります。

普段、水道水でガラス水槽の観賞魚を飼育していると、ガラス面に白いカルシウムの汚れが付着することがあります。室内飼育をされていない方であれば、お風呂場の鏡の「ウロコ汚れ」を想像してみてください。あれは水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が結晶化したものです。温泉地などの水質ではさらに顕著になります。
屋外のメダカ飼育でも、長期間同じ容器を使っていると縁に白いミネラルの塊が付着します。これも水換え時に使う水道水由来のミネラル分が蓄積したものです。
以前、「メダカ飼育における浄水器の選び方~人間用の浄水器の水は入れても大丈夫?~」という記事で、R.O水(逆浸透膜を通した純水)について触れました。(※そちらの記事も併せてご覧ください)
RO浄水器を使って不純物を極限まで取り除いた純水は、実は淡水魚の飼育には不向きです。水中の浸透圧バランスが崩れ、魚が体内の水分やミネラルを維持するために多大な負担(浸透圧ストレス)をかけてしまうからです。そのため、アクアリウム用の淡水向けRO浄水器では、あえて微量のミネラルなどの不純物を残す設計になっているものも存在します。

それほどまでに、飼育水に溶け込んでいるミネラルは生体にとって死活問題です。
では、天然の蒸留水である「雨」はどうでしょうか。
連日降り続く雨は純水に近くなります。つまり「ミネラルが水道水などと比べると少ない水」です。これがメダカにとって良いのか悪いのか。結論から言うと、淡水魚の飼育水としては決して適した状態ではありません。
大量の雨水が飼育容器に入り込むと、水中のミネラル濃度が極端に希釈されてしまいます。ミネラルが減ると水質を安定させる力(pHの緩衝力)も低下するため、水質急変のリスクも上がります。
観賞魚用の水質調整剤にビタミンやミネラルが配合されていたり、人工飼料の成分表に「灰分(ミネラル)」が記載されているのを見たことがあると思います。
魚類の生命維持には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リンなど、少なくとも14種類のミネラルが必要不可欠だと言われています。これらは骨格や鱗の形成、神経伝達、酵素の働きなどあらゆる生命活動に関与しています。微量で済むとはいえ、不足すれば成長不良や体調崩壊といった様々な欠乏症を引き起こします。魚はエサからだけでなく、エラからも水中のミネラルを直接吸収しているため、水中のミネラル不足はダイレクトに健康状態に影響を及ぼします。

梅雨の時期、連日雨ばかりが続くと、日照不足による水温低下だけでなく、この「飼育水の過度なミネラル希釈」が起きています。もしかすると、梅雨時期のメダカの不調には、ミネラル不足による生理機能の低下も原因のひとつとして隠れているのかもしれません。
カルシウム・マグネシウムは、骨格や鱗の形成、筋肉や神経の働きに関与する重要なミネラルです。
適度なミネラルは、水の硬度を決め、浸透圧バランスの安定やpHの緩衝にもつながります。
逆に極端なミネラル不足が続くと、成長不良や免疫力低下、繁殖能力の低下を招く可能性があるとされ、淡水魚やエビの飼育ではミネラル添加剤が利用されることも多いです。
日本の水道水は、多くの地域で軟水ですが、カルシウム・マグネシウムなどのミネラルをある程度含んでおり、その総量が「硬度」として表されます。
平均すると日本の水道水硬度はおおよそ50 mg/L前後の軟水で、メダカを含む多くの淡水魚の飼育に適した範囲に収まる地域が多いです。
浄水過程で有機物や濁りは除去されますが、ミネラルは完全にゼロになるわけではなく、「人が飲んで問題ない」レベルのミネラルが残った水と考えられます。メダカや熱帯魚などの観賞魚にとっても最も使いやすい良い水と言えます。
ただし、飼育水として使う場合は塩素(カルキ)を中和したうえで、必要に応じてミネラルやビタミンを補う添加剤を使う必要があります。
雨水自体はもともと海水や地表水が蒸発してできた水蒸気が凝結したもので、ミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)の含有量は非常に少なく、軟水の中でもさらに低いレベルです。
東京都の例では、雨水のカルシウム・マグネシウム量は水道水の約20分の1程度とされており、水垢がほとんど付かないほどミネラルが少ないことが分かります。
一方で、雨が降る際には大気中の塵・ほこり・硫黄酸化物・窒素酸化物なども取り込むため、場所や時期によってはpHが酸性寄りになったり、望ましくない物質が混ざる可能性があります。

ミネラル量
水質の安定性
実際の飼育への考え方
水道水をベースに、カルキ抜き+必要に応じてミネラルやビタミンを補う、という方法が一般的で、メダカ飼育におけるミネラル確保の面でも扱いやすい選択肢です。
雨の多い梅雨時期などは、屋外水槽に大量の雨が入ると、水が極端に薄まりミネラルや微量元素が不足気味になる、というのが僕の考えですが、その対策として天然素材やミネラル添加剤で補うと良いでしょう。
とはいえ、「雨が入るとすぐにミネラル不足で全滅する!」と過度に心配する必要はありません。
僕が当店の記事やYouTube動画でお伝えしているのは、あくまで様々な知識に基づいた「一つの考え方」です。正直なところ、メダカは非常に環境適応能力が高く、日本で最も飼育しやすい魚の一つです。基本を押さえて普通に飼育していれば、何事もなく元気に育ってくれます。
その上で、「今、水の中ではこういう化学変化が起きているのかも」と想像しながら飼育環境を整えるのも、アクアリウムの奥深い楽しみ方の一つです。ぜひ、ちょっとした豆知識として頭の片隅に置いてみてください。
※雨に関する対策や考え方をまとめた「梅雨時期のメダカ飼育」といった動画もあります。YouTubeで「媛めだか 梅雨」で検索して、ぜひそちらも併せてご覧ください。
・ヨウ素が産卵繁殖に適した水に調整
・水道水に不足するビタミンB群や各種ミネラルを補給
・8種のビタミン・ミネラル含有(ビタミンB2,B3,B5,B6,B7,B12,マグネシウム、ヨウ素)