春が近づき、メダカの産卵シーズンが始まると、採卵に熱が入りますよね。 「指でつまんで硬いのが受精卵、すぐに潰れるのが無精卵」 これはメダカ飼育のセオリーとしてよく耳にする方も多いと思います。
しかし、「受精卵だったはずなのに、簡単に潰れてしまった」 という経験はありませんか?
実は、有精卵であってもタイミングによっては非常に軟らかく、簡単に潰れてしまうことがあります。ここでは、メダカの卵の硬さの秘密と、その背後にある仕組みについて少し専門的に掘り下げて解説します。
まずは基本のおさらいです。
メダカの産卵行動において、メスの産卵に伴いオスが寄り添い、精子をかけます。この時、卵にある「卵門(らんもん)」という小さな穴から精子が侵入することで受精が成立します。
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ここから、卵の運命(硬さ)が大きく分かれていきます。
受精直後の劇的な変化
受精するとすぐに、メダカの卵では卵表層で「表層反応」と呼ばれる化学反応が始まり、卵膜の構造が変化して急速に硬くなります。 受精後30分〜1時間も経つと、卵膜の硬化がかなり進行しており、指でつまんだ程度では潰れないほどの強度になります。「この硬い卵膜は、外部からの物理的な衝撃や細菌などの侵入から中の胚を守るとともに、卵門が塞がることで余分な精子の侵入を防ぐ、多精拒否の重要な役割も果たしています。
「指でコロコロ」ができる理由
この時期の受精卵は非常に丈夫です。 親メダカのお腹から卵を採る際、指の腹でコロコロと転がしてクリーニングしても簡単には割れません。これが「硬い卵=受精卵」と言われる最大の理由です。
より詳しくは「メダカの産卵行動と卵の受精から孵化まで」というタイトルのYoutube動画をご覧ください。
しかし、「受精卵=常に硬い」というのは間違いです。 実は、孵化直前になると有精卵は劇的に軟らかくなります。
孵化酵素(ふかこうそ)の働き
メダカの卵は、水温25℃環境で約10日ほどで孵化します。 日数が経過し、卵の中にメダカの目や体がはっきりと見える「発眼卵(はつがんらん)」の状態になると、稚魚は卵から出る準備を始めます。
この時、稚魚の頭部にある「孵化酵素腺」から、卵膜を溶かす酵素(孵化酵素)が分泌されます。 硬かった卵膜は内側から徐々に溶かされ、最終的には薄い膜(外層)だけが残る状態になります。

孵化直前の卵は取り扱いに注意!
酵素によってペラペラになった卵は、非常に軟らかくデリケートです。 この段階の卵を、産みたての卵と同じ感覚で「硬いかどうか」確かめようとして指でつまむと、簡単に潰れてしまいます。
黒い目がはっきり見えている卵が軟らかいのは、「死んでしまっている」のではなく「もうすぐ生まれるサイン」です。潰さないように優しく扱ってあげてください。.png)
※少し画像が粗く見えづらいですがメダカの卵は数日経つと上記のように目が見える卵、発眼卵へと成長します。
一方で、無精卵はずっと軟らかいままです。 受精していないため、卵を硬くする反応(卵膜の硬化)が起きないからです。
・発生が進まず、カビの温床に
無精卵は細胞分裂が進まず、言わば「死んだタンパク質の塊」のような状態で水中に存在することになります。 そのため、硬くならないだけでなく、防御機能も働きません。
結果として、飼育水中の雑菌や水カビなど)があっという間に付着します。 白くモヤモヤとしたカビに覆われた卵を見かけたら、それは無精卵である可能性が高いです。放置するとカビが健康な有精卵にも移ってしまうリスクがあるため、見つけ次第取り除くのがおすすめです。.png)
※無精卵は上記の画像のような状態になります
「硬さ」は受精卵を見分ける重要な指標ですが、卵の成長段階によって硬さは変化するということを知っておくと、うっかり孵化直前の大切な卵を潰してしまうミスを防げます。
卵のカビ予防について
せっかくの有精卵をカビから守るための具体的な方法については、また別の記事で詳しく解説しています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
