この記事は、メダカが光環境を感知し、季節や波長の変化に応じて体色や繁殖行動が変わる仕組みを解説したものです。光がメダカの生理や行動を強く支配しています。
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メダカは光に支配されている
メダカたちは産卵や成長など含め光りに支配されていると言っても良いほど光の影響 を受けています。
多くの水棲生物がそうであるように、メダカも概日リズム(サーカディアンリズム)と季節リズム(サーカンナルリズム)を光環境に基づき制御しています。特に、光の強さや波長分布は視覚だけでなく、松果体を含む非視覚的光受容系を介して内分泌系に影響を及ぼし、成長・産卵周期を調整しています。
季節による遺伝子発現量の変化
メダカたちは
冬になると光に対する感受性が著しく低下 します。
逆に
夏になると光に対して敏感 になり、これによって
遺伝子発現量の変化 が起こります。
※季節の変化には光環境のほか水温や餌の供給状況なども影響を与え、メダカの生理活動に複合的に関与していることが知られています。
夏と冬で体色などに変化が生じるのは単に水温による代謝や活性の違いだけではありません。
多くの方がこの部分で誤解していますが、メダカ達が受ける光の感じ方の違いも大いに関係しています。
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メダカの網膜内で発現するオプシン遺伝子は季節変動を示し、特に冬季には長波長感受性の低下や全体的な光受容タンパク質の発現抑制が観察されています。これにより光感受性が低下し、代謝エネルギーの節約とともに繁殖行動抑制が起こります。春夏への移行でオプシン発現が急増し、光情報伝達シグナルも活性化、行動変容を促されます。
桿体細胞と錐体細胞
目の網膜には視覚をつかさどる視細胞 があり、視細胞には視細胞の一種である 桿体細胞 と錐体細胞 があります。
暗い所での視覚に特化した桿体細胞(かんたいさいぼう)
明るいところで活動する錐体細胞(すいたいさいぼう)
メダカの場合
あたりが
薄暗くなる冬場 であれば
桿体細胞が働き 、
錐体細胞は少しの間、お休み しているような状態と言えます。
桿体細胞(かんたいさいぼう)も錐体細胞(すいたいさいぼう)も眼に入ってきた光を刺激として受け取る視細胞の仲間です。
色覚用の光センサー(錐体オプシン)
色を感じ取る錐体細胞 (すいたいさいぼう)には
人 でいえば赤錐体 緑錐体 青錐体 の三つの色を感じる
錐体視物質(すいたいしぶっしつ)オプシン があります。
赤のオプシンは赤色光を、緑のオプシンは緑色光を、青のオプシンは青色光を感じ、この3種類の錐体細胞の反応具合によって私たち人は違った色を認識しています。
メダカが持つ8つのオプシン
メダカには紫1つ、赤2つ、青2つ、緑3つの合計8つものオプシンがあります。
メダカ達は私たちが思っている以上に眼から入ってくる情報によって行動や体が変化しています。
メダカのオプシンには紫外線感受性のものも含まれており、人間の視覚よりもはるかに広い波長範囲の光を感知しています。これにより、微細な環境光の変化にも対応できる高度な視覚適応が可能となっています。
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メダカの視細胞は哺乳類のように桿体細胞と複数種類の錐体細胞を含み、これらはそれぞれ異なる光条件に対応して機能しています。桿体細胞は暗所視覚に適応し、錐体細胞は多波長感受性を持ちます。メダカは8種のオプシン遺伝子を保有しており、紫外線から赤まで多様な光波長を感知することが知られています。これは彼らが種内外の色彩認識のみならず、環境光変化検知に極めて高度な適応を持つことを示しています。
季節変化で起こること
魚は通常、
繁殖期 がやってくると
婚姻色 が表れてきます。
メダカたちも同様です。
婚姻色が表れてくることによって赤や黒、これらの色が濃くなったり鰭に黒点が表れる様なこともあります。
こうして大胆に変貌する色の変化=
婚姻色(こんいんしょく) によって相手の興味を誘い込み誘引しています。
水温だけではなく季節の変化は、こうした光(太陽光)の変化 によってもメダカ達が見る世界を変え 、受ける刺激が変わり メダカたちを変化させていきます。
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婚姻色は性ホルモンに加え、紫外線・可視光スペクトルの波長特性の変化が季節的に誘発する遺伝子発現と相関していると言われており、メダカの色素細胞(メラノフォア、キサントフォア等)の数や活性は光環境に影響され、特に生殖行動とリンクする婚姻色は光受容の季節依存的変動に基づきます。これらは繁殖成功率向上のための適応進化の一環と考えられています。
季節で変わる遺伝子発現量
これらのオプシンやその下流にある情報伝達経路の遺伝子の発現量は冬になると著しく低下しています。
季節が変わり 春や夏になってくるとオプシンの発現が一気に上昇 していきます。
冬と夏とでは遺伝子発現がまるっきり変わってきます。
この遺伝子発現の制御メカニズムは現在も研究が進められており、どのような転写因子やシグナル経路が関与しているか、さらなる解明が期待されています。
冬場のメダカはコスト削減
冬は日照時間の減少、太陽光も弱くなることでメダカたちの活性や代謝が低下します。
遺伝子発現が低下すると
タンパク質の合成量も減少 します。
冬場のメダカ達は遺伝子発現を抑えることで
タンパク質の生産コストを削減 しているとも考えられています。
他にも特定の病気へのリスクの増加、成長の阻害、代謝の異常など、遺伝子発現量の低下は様々な影響を及ぼすと言われています。
メダカがキレイに育つ季節は6~9月
遺伝子発現が低下する季節にメダカ達は綺麗に育ちません。
単に水温が高ければ活性があがり、代謝があがり、だから春の子は綺麗だと思われている方も多いと思いますが、光の強さ、太陽光の強さ・日照時間も大切になってきます。
単純に水温だけの話ではなく、光から受けている刺激もキレイなメダカに育てていく上で非常に大切です。
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光受容関連遺伝子の発現低下はエネルギー消費減少、免疫応答低下、成長停滞と関連しており、低温環境下における転写調節メカニズムは概日リズムに影響し、冬眠的休眠状態へ誘導すると考えられます。さらに、視細胞の接着分子や光修復酵素も季節変動し、網膜の構造的柔軟性を担保しています。
入射光と反射光
保護色機能による色素の拡散凝集反応=背地反応についてはご存じかと思います。
よく分からないといった方は、まずは下記の関連記事をご覧ください。
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メダカの背地反応・拡散凝集反応・保護色機能について
背地反応による色素胞の変化をもたらす際に黒容器を使われる方も多いと思いますが 、
ガラス水槽においても黒容器同様の反応をもたらすことが出来ます。
背地反応で最も大切なのは底面
水底に砂利を敷くだけで驚くほど色素胞は変化
背中に受ける光と腹から受ける光で変わる背地反応
背地反応の本質
メダカにとって体色変化の元となる情報は眼から 入っています。
これらはスモールアイのような視力の悪いメダカに黒容器と同じ背地反応が見て取れることからも容易に想像ができるでしょう。
メダカの背地反応は、異なる網膜領域での光感受性に基づいています。腹部の背景色からの反射光は背側網膜の視細胞で受容され、上方(背部)からの入射光は腹側網膜の視細胞で受容されます。
この双方向の光情報が中枢神経系で統合され、入射光と反射光の光量比によって色素胞の制御ホルモンの分泌が調整されます。
水色タライを使う理由
当店(媛めだか)が水色タライを使うのには水の良し悪しの分かりやすさ以外にも理由があります。
それが光の反射です。
背地の色が白などに近いと相当な量の光が反射されます。
逆に黒い容器の場合、光は吸収され殆ど反射されません。
腹側・背側の網膜にある視細胞から感覚神経を介して中枢に入ってきた情報は、
入射光と反射光の光量比によって判断され色素に影響を与えます。
ようするにメダカたちは自分達が今いる場所の背地の明暗を認識しています。
※メダカ飼育において言えば、容器の色=背地といえます。
側眼(そくがん)で受容された視覚情報を元にした色素胞の拡散凝集反応によって色が変化していると考えられています。
結果として、背地の色に非常よく馴染んだ、色味を持ち隠蔽ともいえる保護色機能が働きます。
より詳しく
背地反応は視細胞の空間的な照明情報処理に基づく生理反応で、これは主に眼の網膜の背側・腹側領域の異なる光感受性により成立。メダカの網膜は構造的に四角錐細胞のモザイク配列を持ち、スペクトルの空間情報を高精度に解析し、環境反射光に応じた色素細胞の動態を制御します。
色素の拡散凝集
色素は入射光の強さ/反射光の強さの比で変化しています。
黒色素胞の凝集
例えば、メダカを
白や水色などの容器 にいれると交感神経が刺激され
ノルアドレナリンが分泌 されます。
この
ノルアドレナリンは黒色素胞の表面のαアドレナリン受容体を介しメラノソームが凝集 されます。
視床下部で産生されたメラニン凝集ホルモン(MCH)は、神経繊維を通じて下垂体に運ばれ、下垂体後葉(神経葉)から血中に放出されます。この MCH は黒色素胞に作用してメラニンを凝集させ、体色を薄い状態で保つのに寄与します。
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黒色素胞の凝集によってメダカの体色は瞬く間に白く(薄く)なります。
同時に虹色素胞(イリドフォア)やキサントフォア(黄色素胞)なども関与し、複数の色素胞が協調して白背地適応を実現します。
黒色素胞が凝集すると、その下層の虹色素胞が光反射を増強させ、より効果的な白化が起こるメカニズムがあります。
※短期間で素早く背地に適応する変化=生理学的体色変化
黒色素胞の拡散
一方で
黒色の容器 で飼育していると交感神経は抑制され、
ノルアドレナリンの分泌が止まります。
脳下垂体中葉から
黒色素胞に対する刺激ホルモン(MSH)が分泌されメラノソームの拡散が始まります。
次第に黒容器に同化するようにメダカたちの色味も濃く変化していきます。
長期で変わる色素胞の変化
また、長期間に渡って黒容器で飼育していると黒色素胞の数や形状が変化 していきます。
黒背地での長期飼育では、脳下垂体中葉からα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)が分泌され、黒色素胞表面の melanocortin-1 受容体(MC1R)に結合します。これによってメラノソームが拡散し、体色が濃くなります。
この α-MSH 作用は MCH の作用と拮抗する関係にあり、光環境に応じて両ホルモンのバランスが変化することで背地適応が実現します。
・水色容器(薄い色の容器)の場合
ずっと白や水色タライのような薄い色の容器で飼育していると
メラノソームが凝集した状態が維持 され、
次第に黒色素胞の数が減少し、個々の色素細胞も退縮しメダカたちの体色は更に白っぽく(薄く)なります。 またノルアドレナリンが分泌され続けることによる感受性の低下も起こっています。
短期反応(生理学的体色変化)
白や水色などの容器に入れると、交感神経が刺激されノルアドレナリンが分泌されます。
このノルアドレナリンは黒色素胞表面の α-アドレナリン受容体を介してメラノソームが凝集し、数分以内に体色が薄くなります。
長期反応(形態学的・恒久的変化)
白背地での長期飼育では、視床下部で産生されたメラニン凝集ホルモン(MCH)が脳下垂体から放出され、黒色素胞の MCH受容体(MChr2)に結合して メラニン凝集を維持します。
同時に脳下垂体中葉からの α-MSH 分泌が抑制され、その結果、黒色素胞の数そのものが減少し、体色がより白くなります。
・黒色容器(濃い色の容器)の場合
逆に容器が黒いと黒色素胞の数の増加や発達によってメダカたちの色はより濃くなります。
形態学的体色変化が生理学的体色変化に与える影響
長期間に及ぶ細胞数の増減や色素に関わる調節因子に対しての感受性の変化が生理学的体色変化の効率を高めているとも考えられています。
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メダカの色素細胞はノルアドレナリンとメラニン凝集ホルモン(MCH)、およびメラノフォア刺激ホルモン(MSH)によって制御される自律神経内分泌の影響を受けています。特に短期の生理学的体色変化はメラノソームの動態制御に依存し、長期飼育での形態学的変化は色素細胞数の調節を伴います。これらは神経内分泌系からの信号伝達経路と細胞骨格調節の統合で成り立っています。
補足(光とは何を差している?)
オプシンに関していえば主に光のスペクトル感受性(特定の波長の光に反応する)が焦点となっています。オプシンは視細胞内で光を受け取る分子なので、メダカの錐体細胞には8つの異なる波長に感応する複数のオプシンが存在していて、それによって色覚が形成されます。季節によってメダカのオプシンの遺伝子発現が変化し、光感受性や色覚が変動します。ルクス(光の強さ)やルーメン(発光の単位)よりも、スペクトル(波長)を基にした感受性の話がメインです。
ただ、実際にはメダカのオプシン遺伝子発現は、光の強さ(ルクス)や光周期(日照時間)などの環境要因にも影響されます。季節変化に伴う光強度の変化(冬は弱く、夏は強い)が、オプシンの発現量に影響を与えます。
なので、オプシンの感受性は「スペクトル(波長)」に特化しているものの、発現量や生理的応答は「光強度(ルクス)」や「光周期」にも影響されます。
魚側の視覚反応からすれば、光の総量(ルーメン)と受ける光のスペクトル成分(波長の分布)が両方重要です。
魚側の視点で光の感受性を考えた場合、光の総量(ルーメン)が不足すれば受容体の活性化が弱くなるため、視覚機能全体に影響があります。オプシンの波長感受性の話と、光強度の総量(ルクスやルーメン)が魚の視覚反応に影響する話は補完的な関係にあります。
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