メダカ飼育に紫外線(UVA,UVB)は本当に必要なのか?

メダカ飼育に紫外線(UVA,UVB)は本当に必要なのか?

メリットばかりに着目されがちなメダカ飼育における紫外線。実はデメリットも多いことが近年の研究によって分かってきています。

紫外線がメダカに与えるメリットとデメリット

どんなものにもメリットとデメリットがあります。
メダカ飼育において、ビタミンD3の合成や病気の予防など良い所ばかりにも思える紫外線にもデメリットが多数存在しています。

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メダカ飼育における紫外線のメリットとデメリット


メダカ飼育において紫外線は良い一面と悪い一面が存在しています。
例えば、繁殖においていえば

  • 良い面・・・病原菌制御
  • 悪い面・・・胚や成魚へのダメージ
また成長過程において良い方向へ働きかけることもあれば悪い方向へ働きかけることも考えられます。

今回の記事ではこれらを詳しくご紹介していきます。
yotuube動画と併せてご覧ください。

 

紫外線の主なメリット


メダカ飼育における紫外線の主なメリットは、病原菌の制御にあります。

太陽光に含まれる紫外線は水中のバクテリアなどの細菌や病原菌を減らし、メダカの健康を保つことが期待されます。
紫外線による殺菌効果によって水質管理にも役立ち、病気のリスクが下がることによって間接的に生存率が向上します。

 

紫外線の主なデメリット

受精卵への影響

紫外線がメダカの胚に酸化ストレスやDNA損傷(チミン二量体形成)をもたらすことによって、、孵化率や生存率を下げると言われています。
胚段階では、UVAおよびHEVへの曝露が反応性酸素種(ROS)の生成とチミン二量体の形成を引き起こすことによって、DNA損傷を誘発することがあります。またUVBの曝露は統計的に有意なチミン二量体形成をUVA以上により顕著に引き起こし、胚の生存率や孵化率に悪影響を及ぼす可能性があります。

また紫外線は卵や針子だけでなく、成魚においても腎臓損傷や酸化ストレスが増加し、繁殖能力等に悪影響を及ぼす可能性があります。
成魚への影響

成魚では、UVA放射が腎臓にネフロトキシック効果をもたらすことが報告されており、具体的には、管状細胞の高度な空胞化と壊死、糸球体の収縮、酸化ストレス増加が観察され、特に野生型(WT)のメダカで顕著だと言われています。
さらには低レベルのUV曝露においても、メダカの抗酸化システムに影響を及ぼし、カタラーゼ活性が50%以上低下し、脂質の酸化損傷が増加することが分かっており、これらは長期的な繁殖成功に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

繁殖への影響は間接的

直接的に紫外線が繁殖へ影響を及ぼしているというよりは間接的な影響と言えるでしょう。
例えば、紫外線による成魚への健康阻害(腎臓損傷や酸化ストレス)によって、産卵能力や精子の質に影響を与える可能性があります。

 

また、前述の通り、受精卵・胚においての初期損傷は孵化率や稚魚の生存率に直結します。
メダカ飼育において強すぎる紫外線は遮光することも大切です。

 

メダカの屋外飼育においての応用

春先であれば、太陽光を当てて水温をあげないと卵の発育が進まないため、そもそも孵化させることが出来ません。
そのため、太陽光を充てる必要が出てきますが、当てすぎると紫外線による影響も否定できません。

この辺りも含めると、太陽光を無理に当てなくとも外気温が上がってくる季節=5月以降の採卵がおすすめです。

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過度に気にし過ぎない!
メダカの屋外飼育において紫外線を過度に気にし過ぎるがあまり、太陽光を完全にシャットアウトしてしまうのはよくありません。
適度に太陽光を利用しながら微生物たちの発生を促し、育てていくのがベストです。

 

ビタミンD3と紫外線の真実


紫外線がないとビタミンDが合成できない?

これ実は科学的な研究においての直接的な合成に関しての証拠が限定的とも言われています。

他の動物においての話をメダカに置き換えている部分も多く、メダカ特有の代謝経路についてはまだまだ研究が必要な段階だと個人的には思っています。

 

熱帯魚や金魚などの観賞魚が室内の紫外線のない環境で全く問題なく育成できているのに、何故かメダカだけが「紫外線がないとビタミンD3が合成されないから上手く育てることはできない」と言われることがあります。

 

以下は私の考察です。

メダカは細菌や寄生虫に感染し病気になると当然痩せていきます。

 


太陽光の下で飼育させるメダカの屋外飼育においては紫外線による病原菌の殺菌が病気の予防につながり、間接的にメダカたちはぷくぷくの健康な状態で成長していきます。
室内飼育をしていると、この部分において飼育技術や知識による差が顕著に表れ、人によっては上手く育てることが出来ない方がいます。

 

この部分を理解できていない方が

  • 「室内だと痩せてくる」
  • 「紫外線がないからビタミンD3が合成されていないからだ」

となっている可能性があります。

 

まとめ

太陽光に含まれるUVAやUVB等の紫外線は、メダカ飼育における病原菌の制御においては有益です。
ただ、紫外線(UV)の曝露量や成長段階によっては受精卵(胚)や成魚に深刻なダメージを与える可能性があります。

この部分をしっかりと理解できていれば、紫外線がなくとも室内でメダカを飼育することは容易です。

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