春めいてくると「早く餌を食べさせたい!」という気持ちになる方も多いと思います。冬の間、餌切り・餌止め(えどめ)をしていたなら尚更です。
でも、餌の袋を開ける前に、まずはやっておかなければならない重要な準備があります。
注意点
・準備なしに餌を与えると、水質崩壊の引き金になる

冬の間も、暖かい日には微生物が殖え、寒い日には死滅します。
三寒四温や寒の戻りによって、目に見えないレベルで微生物の増減と「死骸の蓄積」が繰り返されています。

ここが少し専門的な話になるんですが、冬場のように水温が低いと、水をきれいにするバクテリアの働きも落ちますが、同時にフンやエサも少なくなり、腐敗菌や病原菌の活動も全体的にゆっくりになります。
だから、冬の間は底に溜まった汚れ(微生物の死骸や枯れた水草など)が、腐らずにそのまま保存されていたような状態になっていることがあります。

春の水温上昇は「冷蔵庫のコンセントを抜く」こと
春が来て水温が一気に上がると、この保存されていた汚れが一斉に腐敗を始めます。
今まで冷蔵庫に入っていたおかずを、真夏の常温に放置するのを想像してみてください。すぐに傷んでしまいますよね?
飼育水の中でも同じことが起きます。
春の日差しで水温が上がると、底に溜まった有機物が急速に分解され、魚にとって猛毒である「アンモニア」や「亜硝酸」が一気に噴き出します。

この状態で餌やりを再開してしまうと、餌の汚れもプラスされて、水質の崩壊を招きます。
これが「春にメダカが落ちやすい」最大の原因の一つです。
だからこそ、冬の水を春の水に換えていく作業が必要になってきます。
当店ではこれを「メダカを起こす」と呼んでいます。まずは新鮮な水で環境をリセットしてあげましょう。
関連記事・・・越冬明けのメダカの起こし方|春の最初の水換えの大切さ

目安としては、最低水温が安定して10度を超えてきたあたりです。
この時期になれば、日中の水温は15度~20度近くまで上がるので、消化不良のリスクも下がります。
ただし、「水温計だけ」を見て判断するのは危険です。
季節の変わり目は水温が安定せず、メダカたちの体内時計や活性が追いついていないことがあるためです。
水温はクリアしていても、メダカが水面に浮いてこない、あるいは動きが鈍い時は餌を与えないでください。
食べ残し(残餌)は、春の不安定な水質をさらに悪化させます。
まずは水換えをして刺激を与え、メダカたちの活性が上がって「餌をくれ!」と寄ってくるようになってからでも遅くありません。
もし、水温は高いのに餌を食べない場合は、別の原因も考えられます。
詳しくは以下の記事も参考にしてみてください。
メダカが餌を食べてくれないのは何故?原因と対策
また、久しぶりの給餌は、メダカの免疫機能や代謝バランスを崩すきっかけにもなり得ます。
病気のリスクについてはこちらで解説しています。
餌で病気に!?代謝で考える発送前の餌切りと病気の治療への考え方
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再開初日は、本当に少量を1日1回だけ。
そこから数日かけて、徐々に量や回数を増やしていく「リハビリ期間」を設けてください。

なぜ少量からなのか?
冬のあいだ、低水温で過ごしていたメダカは、代謝が極限まで落ちています。
これにともない、腸の消化酵素=つまり「食べたものを溶かす力」の働きも非常に弱くなっています。
さらに、長い絶食期間を経ることで腸の絨毛(じゅうもう)が低くなり、粘膜が萎縮している場合もあります。
そんな状態で急にお腹いっぱい食べてしまうと、消化が追いつかず、餌が腸内で異常発酵を起こしたり、未消化のまま腸に負担をかけたり、うまく栄養として吸収されないことがあります。
結果として、「せっかく餌を与えても意味がない」という状態になってしまいます。
人間でも、断食明けや手術後にいきなりステーキを食べたりしませんよね。まずはお粥から始めます。
メダカも同じです。
春の給餌は、消化の良い餌(消化吸収しやすい形態のタンパク質)を選ぶことが大切です。
こうしたちょっとした気遣いが、春先の生存率をぐっと高めてくれます。